『問題解決に効く「行為のデザイン」思考法』を読みました

プロダクトデザイナーである村田智明氏の『問題解決に効く「行為のデザイン」思考法』を読みました。自身のアイディア創出の方法やデザインの考え方、企業がワークショップを行う際の手順をわかりやすく解説した本です。

個人的にはマジョリティを基準に発想するという方法が一周回って新しく感じました。リサーチを重要視するのはデザイン思考と同じですが、「ターゲットの気持ちを想像すること」の大切さを説いている部分がデザイン思考と少し異なる点でしょうか。

本文中にも語られているように、この方法はただアイディアを出すだけではない、多くの人のコンセンサスをとれることに大きな意義があります。それだけに関係者を一同に介する担当者の「スキル」が問われるのではないでしょうか。

デザイン思考など発想法の課題

IDEO創業者が語る「創造的な組織をつくる3つのこと」(PRESIDENT 2016年12月19日号)

「日本人は学ぶのが好きです。そして社員を育成するというマインドを強く持っています。」

私はここに日本らしいアイディア発想法の課題を感じることがあります。私が知る大企業の方々は、イノベーションの手法も含め、最新の知見をとてもよく勉強していらっしゃいます。しかし様々な情報を得てマニュアルっぽく思考を整理することは好きなのですが、「実践」での失敗は極端に怖れがちです。

トム・ケリーの本にも書かれているように、まずクリエイティブに生きるという勇気を持つことが何より大事です。多くのイノベーターが語るように、本当に新しいことは二度繰り返されないのですから、何かを作ることは100の知見よりも1の実行です。大切なことは、より実践的な失敗、実験を繰り返すことです。

アイディアの出し方はさまざまだが、体験はただ一つ、一度きりしかないということ

先日のサッカー・クラブワールドカップにおいて、日本の鹿島アントラーズの健闘が光りました。その鹿島に「スピリット」を植え付けたジーコは、日本にやってきた当初、ミーティングの際に日本人選手がみんな紙を取り出して、言われたことをメモしだしたのを見て唖然としたと語っていました。フィールドの状況は刻一刻と変わっているのだから、メモした状況がそこにあるわけではないのです。

創造的な仕事も全く同じことが言えるのではないでしょうか。我々は医師や医療従事者になれるわけではありませんが、一次的な体験や経験を基にして、それを想像し体感することはできます。本やネットで読んでナルホドではなく、人の眼を見て話を聞いてその空間・時間を共有し、そして「想い」に共感する。五感で感じることが重要なのです。

考えるより、まず感じること。クリエイティブは言うならばブルース・リーです。デザイン思考に限らず、日本でも古くからKJ法などあり、創造的な手法は様々です。この本の内容を「よくあるアイディアだしの本」「実践的ではない」と片付けるのはたやすいことです。あるいは「なるほど!」と思ってノートにするのも悪いことではない。しかし、どんなやり方もクリエイティブに生きるという勇気のうえでこそ機能するのだと思います。

brucelee

問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法 村田 智明 (著)(amazon)